ハヤトコウジとは誰?

集英社の漫画雑誌『ジャンプ』関連に漫画を載せている漫画家です。“ハヤトコウジ”は本名だそうです。所謂売れっ子〜とかいうタイプの方ではないようですが、積年の固定ファンはちゃんといます。ここに。
絵柄は個性的な部類に入るかと。描線はシャープで、扱う話はストイック。若々しさは少なく、多少は地味めかもしれません。キャラクターの性格付けが厭味のない感じです。悪役を魅力的に描ける漫画家だと思います。
現在までに刊行されているコミックは計12冊。古本が主な入手源というところが悲しい。出版元は全て集英社、シリーズ名は“ジャンプコミックス”です。


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『YAKSA −ヤシャ−』
1990年〜1993年 全7巻

“ヤクザ”ではありません。夜叉の“ヤシャ”です。『幻燈忍伝』に外伝が収録されています。これを見つけたときは心臓がばっくばっく音を立てるほど嬉しくて興奮しました。

本編では、進歩して崩壊した文明の荒廃した跡地が物語の舞台となっています。そこでは犯罪者はその罪状に合わせた報奨金を掛けられ、償金首狩をする償金稼ぎというものが職業として成り立っています。ソーニャが出会った「ヤシャ」もその内の一人のようなのです。
この「ヤシャ」、普段はニコニコと愛想良くしている子供のくせに、一度仮面を払うと鬼のように恐ろしく不気味な形相の男に成り代わります。
第一話、償金稼ぎのソーニャは危ないところをヤシャに助けられ、ヤシャのせいで命の危険にさらされ、おっかないと思いつつ興味を抱きヤシャにくっついていきます。このことが後々ヤシャに影響を与えていくのです。

この説明では「よし読んでみるか!」という気にはならないとは思います。思いますが、少なくとも一人は盲信する位に虜にしている作品です。表紙のビビットな色彩に臆せずに手にとって中を見てください。『ベルセルク』のような雄雄しく血の滾るような迫力に充ち満ちたものではありませんが、刀を構えた中年の(偶に若いのもいます)静謐な(当事者達は真剣ですよ、勿論)勝負を見る事ができます。特に六巻、斜陽剣のシウジの勇姿には、毎回比喩じゃなく泣きそうになります。話も最高だけれど、兎に角描線が美しい!!

それからですね、少女漫画好きにも嬉しい好いた惚れたの要素もちゃあんと盛り込まれているのです。何とも自然に。埃臭い決闘ストーリーのみじゃない所が、繊細さと勢いを同等に好まれる方にも受け入れてもらえるのではないかなと・・・思うのですが。

現在古本でしか入手できないのが残念でなりません。文庫版として出してくれないかなぁ。表紙は書き下ろしで。


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『ブレス・オブ・ファイア −翼の王女−』
原作:沢村烈 1994年 全2巻

カプコンから1993年に発売されたSFCのRPG『ブレス オブ ファイア 竜の戦士』を原作にしたお話。絵柄が一寸変わったようです。ハヤト氏の描く青年〜中年って、如何してああも好い味出しているのでしょうかね。


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『ブレス・オブ・ファイア −小さな冒険者−』
原案協力:沢村烈 1995年 全1巻

上記RPG漫画の数年後を舞台にしたお話。ギーちゃんが可愛いったらないです。怪しい村人と怪しくない人々、親切なおじさんと見るからに悪い人など、ハヤトコウジワールドの魅力満載です。脇役やエキストラが面白いんですってば。


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『幻燈忍伝』
1997年 全1巻 (『YAKSA −ヤシャ−』番外編収録)

これまでのものとは打って変わって、舞台は江戸時代。忍者坊さんお侍様町娘と色々出てきます。冒頭の忍者対決で意識を持っていかれました。なんて格好良い!!あれで忍者好きに止め刺されました。


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『YES −イエス−』
2000年 全1巻

現代日本に舞台を置いてはいますが・・・勿論、一寸ばかりあちらな感じに仕上がっているお話です。弥生ちゃんの性格が大変現実的ですね。「こんな『YES』もありました」の、そんな『YES』が本気で読みたい。どんなだったのですか。





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